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二人で煙草を燻らせながら、青い空を見上げる。
春の晴天。
その間、大して言葉は交わさずに。
でも、この沈黙は気まずくはない。
寧ろ、どこか安心するような。
そんな。心地のよい沈黙。
お互い、ほぼ同時に煙草を吸い終え、俺は常に携帯している携帯灰皿へ吸殻を押し付け火をもみ消す。
それは、隣にいる九条先輩も同じことで。
ふ、と。
九条先輩が持っている携帯灰皿に視線を落とせば、奇遇にも色違い。
「あ。凛ちゃんもここのブランド好きなの?」
「はい、好きです。九条先輩も?」
「うん。ここのブランドすごく好きなんだよね。独創的で、それでいて繊細じゃない?」
そう言って微笑む先輩は、とても年上とは思えないくらいにあどけない表情を浮かべている。
確かに。
俺も、ここのブランドは独創的で、それでいて繊細なデザインが気に入っている。
割りとコアなファンが多いブランドだから、まさか先輩も好きだったとは。
意外だ。
「俺、服とかもそこで買ってるんだ。一度はまっちゃうと、とことん極めたくなっちゃって。」
「俺もです。」
「…なんか、意外かも。」
「何がですか?」
率直にそう尋ねれば、九条先輩は少し思案を巡らせた後、言葉を選ぶようにして此方を向く。
「いや、なんかね。凛ちゃんって、割りと可愛いような、綺麗目な感じのテイストが好きなのかなってイメージがあって。だから、意外だな、と。」
「…はあ、なるほど。」
「あの、これは決して悪い意味ではなくて。うん」
そう言って、何故か慌てる彼は面白い。
こんな一面は、初めて見た。
なんとなく。
彼を少し知れたような気がする。
俺は、可笑しくなって静かに笑いを溢すと、九条先輩は何とも言えない顔で苦笑いを浮かべた。
「俺、綺麗目は好きですよ。可愛いのは流石に着ないですけど」
そう告げれば、九条先輩はまたもや苦笑いを浮かべながら、本日3本目の煙草に火をつけた。
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