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。+Ephemeral light+。
月日が経つのは本当に早いと。
実感せずにはいられない。
九条先輩と知り合い。
春の気持ちになんとなく気づいてしまってから、もう1ヶ月が経とうとしている。
暦は4月から5月へと変わり。
満開だった桜の木は、新緑の葉を揺らしはじめている。
相変わらず。
時々。
九条先輩から、連絡があり。
2人で煙草を燻らせながら、他愛ない言葉を交わしたり。
一緒にいるだけで、殆ど言葉を交わさない時もあった。
無言でいても不快感や気まずさを感じることは無く。
寧ろ、心地よく感じてしまうのだから不思議だ。
あの日から、出かける際はきちんと蓮や春に連絡を入れているので、小言を言われる回数も減り。
比較的安定した毎日を送れているような気がする。
「りっちゃん、もうすぐ修学旅行だね!」
何の変哲も無い昼休み。
教室で、4人で購買で買った昼食を食べていると。
春に突然そんな事を言われ。
あと1月もしない内に、修学旅行があることを思い出す。
月白学園は、高校2年の6月初めに修学旅行がある。
6月というのは、心なしか早い気もするが。
校長曰く。
『日本は梅雨の時期だからこそ、海外で思う存分楽しもう』
という意図があるらしい。
2週間程前に、修学旅行のグループ分けも滞りなく淡々と決まった。
この学園は、初等部からの持ち上がり組みこそ少ないものの。
殆どの生徒は中等部から大学までエスカレーター式なので。
大抵は、仲の良いグループは出来上がっている。
なので、行事などでグループ分けをする時は、毎回揉め事も無く着々と決まるのだ。
那智曰く。
『俺たちのグループに入りたい人は沢山いるみたいだけど。いろんな意味で恐れ多いんじゃないの』
だそうで。
別に、3人とも怖くないけど…と。
那智に返したら、盛大な溜息を吐かれたのは記憶に新しい。
「イタリア楽しみだよね!俺、パスタとかピザとかいっぱい食べたい!」
「春らしいね」
「りっちゃんも、俺の食い倒れツアー付き合ってよね!」
「それは…、」
「春。凛の小ぶりすぎる胃袋じゃ凛はついていけないだろ。俺が付き合うよ」
「れんれんが?んー…」
「なんだよ、俺じゃ役不足?」
「そんなことないけどさー」
春は、蓮の方に視線を寄せつつ。
ぽってりとした唇を尖らせている。
春の気持ちは嬉しいけど。
蓮の言うとおり、俺では100%ついていけないだろう。
完全なる役不足だ。
そんなことを思案している俺の方を見て、那智がクスクスと笑う。
そんな那智に俺は首を傾げる。
「ふふ…、ほんと凛は面白いよね。」
「何がだよ」
「なんか、考えてることが手に取るように分かっちゃうんだよ。凛は、直ぐに自分の中で考え込むから。」
那智は、そう告げて。
昼食のサンドイッチをまた食べ始める。
…那智にかかれば、誰の考えでも読めそうだけど。
と。
思ってしまった事は。
己の心の奥に留めておくことにしよう。
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