。+Ephemeral light+。

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程なくして。 九条先輩が、バスルームから出てきた。 やはり。 お風呂上りの九条先輩は、色っぽい。 ハニーブラウンの綺麗な髪が濡れていて、まだ残る雫が妙に艶めかしい。 「…凛ちゃん?…なんだか、そんなに見つめられると恥ずかしいんですけど」 「あ…すみません。髪が、ハニーブラウンの髪が綺麗だな、と」 「そう?これ、地毛なんだよね。お祖母ちゃんがロシア人だから隔世遺伝ってやつ」 「そうだったんですか。染めているのかと」 「よく言われる。俺は、凛ちゃんの髪色の方が綺麗だと思うけど」 「俺ですか。まあ、気に入ってはいますけど。貴方には劣ります」 俺が、そう言うと。 彼は、濡れた髪をタオルで拭いながら、俺の隣に腰を下ろした。 ソファーが軋む。 隣から、シャンプーのいい香りが漂ってくる。 「…俺も、シルバーにしようかな」 「…染めるんですか?」 「なんか、凛ちゃんと御揃いにしてみたくて」 「…はあ」 九条先輩の、綺麗な白い指先が。 俺の髪に優しく触れる。 この人は、きっと俺よりもシルバーが似合う。 想像するだけで分かる。 俺は、どちらかというと女顔である自覚はあるので。 少しでも格好良くなれるようにと髪を染めたのだ。 この顔で黒髪だと、格好良いには程遠い気がして。 金色か、シルバーか。 悩みに悩んだ末に、今の色にした。 最初の頃は蓮も両親も驚いていたが。 今となっては、何も言われない。 「きっと、九条先輩はシルバーも似合いますよ。俺は、今のハニーブラウンも好きですけど」 「…なんか、照れますね」 「俺も、九条先輩みたいな顔立ちに生まれたかった」 「そう?俺は、凛ちゃんの綺麗な顔立ちが羨ましいけどなあ」 「…綺麗っていうのは、貴方みたいな顔立ちの人を言うんですよ」 九条先輩に視線を寄せながら、そう告げれば。 九条先輩は、納得がいかないような。 なんとも言えない表情を浮かべている。 そろそろ。 俺もお風呂に入ろうかと。 ソファーから立ち上がる。 「お風呂、お借りします」 「うん、どうぞ。タオルは置いといたから、それ使って」 「ありがとうございます」 九条先輩に、軽く頭を下げ。 俺はバスルームへと足を運んだ。
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