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春は彼らと7時に約束をしていたらしく。
7時少し前に蓮と那智が俺たちの部屋へとやってきて、4人揃って寮にある食堂へと足を運ぶ。
食堂へと向かう短い時間で、とても視線を感じたが彼らはそんな視線など慣れた様子で。
全くと言っていいほど気にも止めていない。
俺はといえば、未だにこういう視線に慣れることはなく。
なんとなく。
なんとなく、自然と気分が急降下していく気がする。
そんな様子にいち早く気づいたのは、蓮で。
流石双子というには、そこまで以心伝心のようなものはないが、やはりこういうときに俺の異変に一番に気づくのは蓮なのだ。
「凛。気分悪い?」
「ん、ちょっと。」
「気にしなきゃいいのに」
「…気にしないでいられるならそうしてる」
蓮との会話は毎回こんな感じで。
俺と蓮は双子で。外見こそ瓜二つと言っても過言ではないが、中身は全くと言っていいほど正反対だ。
蓮が光ならば、俺は間違いなく闇なのだろうと。
そう思わずにいられないくらいには、違う。
「凛、また振られたでしょ?」
不意にそう話しかけてきたのは、那智で。
那智は情報を掴むのが驚くほど早い。
話しているうちに食堂へと着いてしまったので、適当に月見うどんを注文しながら、那智の言葉に頷く。
別に、月見うどんでなくても良かったが、なんとなく目に入ってきたのだ。
「凛は、少しは振るってことを覚えたら?好きでもないくせに付き合うなんて時間の無駄じゃない」
那智の言葉は、いつも少々きつい。
でも、確実に核心を得ていて、それでいて正しいので何も返す言葉は無い。
「さて。どこに座る?」
「窓側がいい!」
そんな那智と春のやり取りをぼんやりと見つめつつ、俺も席へと腰をかけた。
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