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俺は、大切な裕貴を傷付けた。俺が裕貴を好きな事はあの3バカにも見え見えだったんだ。俺が裕貴を好きになったばっかりに裕貴があんな目にあった。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
頭の中に声が聞こえる。
俺は路上でひざまずいた。
呼吸ができない。空気を吐けず、肺が空気でいっぱいになる。苦しくてパニックに陥る。
意志とは関係なく身体が空気を取り込もうとする、肺が破けそう。怖い、怖い。視界が霞む。 頭の声が弱った俺を見て喜んでいる。
もう死にたい、死んでしまいたい。
受け入れる。死への欲求が高まる。
「大丈夫だよ、死なないよ」
ミカの声がした。背中をさすってくれている。
「ゆっくり呼吸して、大丈夫、俺がいるから」
その言葉にすがりつく。
苦しいよ、たすけて。
「ゆっくり吐いて、できるから」
その言葉だけを信じる。
ごめんなさい、ごめんなさい
「大丈夫だよ。蓮さんは何も悪くないんだよ」
その言葉だけを信じる。
涙がこぼれた。ゆるしてくれるの?
「大丈夫だよ、大好きだよ」
その言葉だけを信じる。
俺も大好きだよ、大好きだよ。
気がつくと俺はミカの肩に顔をうずめ抱かれていた。ミカのグレーのパーカーに俺の唾液でシミができていた。
「ご、め、ごめん」
呼吸が整わないうちにそう言うと
「大丈夫、しゃべらなくていいよ」
と言った。何もかも許してくれそうな口調だった。呼吸が徐々に落ち着いてきた。
「俺のうちに行こう。すぐだから」
ミカの肩を借りて促されるまま歩いた。
本当に歩いてすぐの所にミカの家はあった。
ワンルームのアパートの一階だった。
家に着くとミカは俺をベッドに寝かせてくれた。
「ごめんね、散らかってて」
ミカがそそくさとその辺の衣類を片付ける。
セミダブルのベッドと小さめのテーブル、椅子が2脚あった。台所には背の低い冷蔵庫、その横の棚に電子レンジやトースターがあった。
「めっ、迷惑、かけて、ご、めん、」
まだ少し息苦しくて言葉が途切れる。
「こっちこそごめんね、あの店行かなきゃよかったね」
ミカはベッドに座り俺の目にかかる前髪を指ですいた。小さな子供に母親がするような仕草だ。恥ずかしくなり目を伏せた。
しばらくして呼吸が整うとミカがミネラルウォーターを持ってきてくれた。
ゆっくりとそれを含み胃に落としていく。
「迷惑かけてごめん」
「蓮さんありがとう、助けてくれて。蓮さんて強いんだね。かっこよかったよ」
ミカはそう言った。
初対面の相手の前で過呼吸を起こし自宅に連れていかれ介抱される男など格好良いわけがない。
「あんな発作起こして、面倒かけて申しわけない」
「あれは、蓮さんが怒りの矛先が自分に向いちゃう人だからなるんだ。本当は強いからなっちゃうんだよ」
そう、強い口調で言い切った。
「お、俺は、そんな男じゃない。早く楽になりたいからミカさんを襲ってそれから死のうと思っている、サイテーの男だ」
「いいよ…」
「えっ」
「お相手するって言ったでしょ」
「俺、蓮さんに襲われてもいいよ」
ミカの綺麗な瞳が潤んで揺れる。
襲われてもいいなんて、そこまでお膳立てされているのに、童貞でチキンの俺は、手も足も出ない。ミカが俺の太股を撫でる。
「待ちきれないよ」
そう言うとミカに口唇を塞がれた。
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