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 がさつな足音が聞こえる。嫌な予感。  声に聞き覚えがある。不穏が頂点に達した。がやがやと店内に横暴さを巻き散らかしながら入ってきた連中は俺のかつてのクラスメイト達だった。リーダー格のデカブツ松下、狡猾で下品な大島、無能な腰巾着迫田の3人だ。後ろにもう一人俺の知らない目付きの悪い男がいた。こいつは少し強そうだ。 こいつらは弱いくせに威張りたがる。気に入らない事が、あると大声で威嚇する。脳みそが、猿以下の外道だ。 「あれ〜一ノ瀬じゃん?やっぱり蓮じゃん。何やってんの?」  奴らの公開処刑が始まった。迫田が最初に絡んできた。 「今日はおホモ達とデートですか?」  大島が嘲笑をうかべながらそう言った。  今日は後ろに助っ人がいるからかえらく調子に乗っている。どこかで俺に会ったら仕返しをしようと思っていたのだろう。 「まだ、生きてたんだ。おホモ達に振られて自殺したって噂になってたのによ〜」  こんな非力な奴ら正直、怖くない。 「お前よ〜、俺らの事、馬鹿にしてんだろ〜!この先輩は六代目極仁会の幹部やってる方だぞ」  知るか、そんな事。   自分が強い訳でもないのに大島がイキりきってそう言った。 「いい加減無視してっとブチ殺すぞ!」  松下が、威勢よく啖呵を切って台のトレーを床に落とした。店内が静まり返る。店員がどうかなさいましたかと慌てて出てきた。  ミカをそっと逃して外に出るか、と思った時、ミカが立ち上がってこう言った。 「ヤメなよ!蓮さん困ってるだろ!」  視線が一気にミカに注がれた。まずい。 「はぁ?誰こいつ」 「お店で大声出して迷惑なんですけど!」  ミカは 毅然とした態度でそう輩達に言い放った。 「何こいつ、女かよぉ?」 「可愛いじゃん」  迫田が下劣な顔でミカを見る。明らかに卑猥な対象として奴らの視線に晒された。 「蓮なんかやめて俺達とHなことしようぜ」 そう言って4人でミカを取り囲んだ。  限界だ。身体の筋肉が硬化し、血がたぎるような感覚を覚えた。  最初に松下の襟首を掴み腹を渾身の力を乗せて蹴り込んだ。面白いくらい飛んで壁に激突した。考えさせる間も与えず迫田と大島の髪を掴んで奴らの額をクラッシュさせた。もう一人のチンピラの顔面を正面から殴った。  慌ててミカの手を取り店内を走り去った。ミカが手を引かれながら店員に謝罪していた。 しばらく二人で走った後、俺は急激な頭痛と吐き気を催した。    
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