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「お前ら愛し合ってんだろ!キスしろよ!」
不意に忌まわしい過去がフラッシュバックした。放課後の教室で俺が起こしてしまったあの事件。
俺は高校の時、恋焦がれた人がいた。
有田裕貴。言わずとも裕貴には俺の気持ちは知られてしまっていた。要するにバレバレだったのだ。
「蓮君みたいにかっこいい人から惚れられて嬉しいよ。でも俺は女の子が好きなんだ」
裕貴はそう言ってくれ俺を側においてくれた。
俺達の通う男子校は偏差値はそこそこだったが自由な校風の為、あの3バカみたいな中途半端なヤンキーもいた。
俺達が一緒にいるのを見て3バカがこそこそホモだと言っているのを耳にした事があった。一緒にいるだけでホモならテメーらもだろと言いたかった。今にして思えば俺の裕貴に対する態度は友情を超えた関係に見えたのかもしれない。
病弱な裕貴が貧血で倒れた時、お姫様抱っこで保健室に運んだり、上級生にカツアゲされた時は取り返しに行った。
頼られれば何でもしたしそれが至上の喜びだった。裕貴以外の人間はどれも同じ顔の金太郎飴のように見えていた。
溺愛中の俺は裕貴の《くぐつ》傀儡に成り下がっていたのだ。
あの日の放課後、俺は突然、後頭部に激しい衝撃を感じた。一瞬、意識が遠のいた。背後から硬い物で殴られたのだ。
すぐに意識を取り戻すと俺は両腕を大島と迫田に取られ、目の前に椅子に縛り付けられた裕貴がいた。
「お前ら愛し合ってんだろ。キスしろよ!」
ゲラゲラ笑いながら迫田が言った。
「有田に一ノ瀬のチンコしゃぶらせようぜ!
」
大島が下衆な笑いを浮かべながら言った。
「やめろよ!こんなの!」
裕貴が拘束を解こうと泣きながら暴れる。
松下が裕貴を頬を殴った。裕貴の顔は鼻血と涙でグチャグチャになった。
「一ノ瀬は有田のケツに突っ込みたいんだよな?」
迫田が腕を掴みながら言う。
俺は取られた腕の拘束を解こうと暴れるが二人がかりで取られた腕はなかなか解けない。
「有田を脱がそうぜ!」
裕貴が信じられない表情で奴らを見ながら暴れた。裕貴のズボンに松下の手がかかる。
裕貴が泣き叫ぶ。面白しろそうに奴らがゲラゲラ笑う。
やめろやめろやめろやめろ
裕貴のズボンが下げられた。
性器が露わになる。
いたいけなその姿に俺の理性が飛んだ。
迫田に強烈な頭突きをし拘束が緩んだすきにそいつの腕を関節からへし折った。
バキンと折れる確かな感触があった。
大島に馬乗りになり顔面をタコ殴りにした。すぐに奴は気絶した。
唖然とする松下を捕まえ床に転がした。腹を蹴り呼吸困難のそいつの髪を掴んで頭を何度も床に叩きつけた。床が汚い血で染まる。松下は壊れた人形のようになすがままにされていた。
「殺してやる。殺してやる。殺してやる」
俺には明確な殺意があった。
「やめろっっ!!」
「やめろっっ!!」
裕貴が叫んだ。
「死んじゃうよっっっ!!」
手がとまった。我にかえる。
「裕貴、ごめん。大丈夫?」
慌てて椅子に縛られた裕貴の拘束を解いた。
落ちたズボンを裕貴に渡した。
「大丈夫?ごめん、裕貴ごめん」
裕貴は震えていた。目を合わせてくれない。
「気持ち悪いんだよホモ野郎」
裕貴が静かに言った。
「お前のせいで俺までこんな目にあったじゃないかぁっっ!!」
堰を切ったように裕貴が叫んだ。
「お前なんか死ねよっ!!」
オマエナンカシネヨ
言葉の意味を反芻する。
胸が激しく傷んだ。
「ごめんね。裕貴、俺のせいで。俺、ちゃんと死ぬから」
その後入ってきた教師に事情を聞かれた。
事実を話せば裕貴が2度、傷付く事になる。
「ムカついたからやりました。」
そして俺は退学になった。
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