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「蓮さん、ご飯できたよ」
ミカのキスで起こされた。
朝なのか夜なのかも区別がつかない。
室内は薄暗く台所だけ明るかった。
室内に食欲をそそるいい匂いがしていた。
「カレー?」
「うん。お昼ごはん食べそびれちゃったから、蓮さんが寝てる間に作ったんだ」
「ありがとう」
俺の手を取ってテーブルにいざなう。ミカはパーカーを羽織っただけの格好で裾から白くてまっすぐな脚が伸びている。
「あとでまた見せてあげるから先に食べよう」
俺、そんなガン見してた?はずっ
「いただきます」
「沢山作ったから遠慮はいらないよ」
カレーはうまかった。
引きこもってから食事がうまいと感じたことはなかった。
味が全くしなくなったのだ。砂を噛むようなという言葉があるが、本当に砂や粘土みたいな物を咀嚼しているみたいだった。
母の料理が悪いわけではない。母はマメに料理をする人だし引きこもる前はどれも好きだった。
「すごく美味しいね。どうやって作ったの?」
「チキンカレーだよ、特売で買った市販のルー使って」
俺の舌はどうしたんだろう……
「たくさん出しちゃったからたくさん食べないとね」
思わず笑ってしまった。
結局、俺はカレーを3杯食べた。
二人で風呂に入った。いいと言ったのにミカは俺の頭を洗ったり、背中をこすったりしたがった。
なんとなく元恋人の影がちらついた。
二人で浴槽に入り、ミカを後ろから抱きしめた。
「どうして?」
「ん?」
「どうして、死にたいの?」
俺は簡単にあの事件の事を話した。
「蓮さん、悪くないのに」
「俺が好きになったから」
「そんなに好きだったの?」
「うん。生まれ変わったら彼の上靴になりたいと思ってた」
「なにそれ?せめてパンツじゃない?」
「それは最高だけど、上靴でいいよ」
ミカは急に黙った。雰囲気が、変わった気がした。
何か怒らせるような事を言ってしまったか不安になった。
「俺が蓮さん位、彼を好きになっていたら彼は死ななかったのかな?」
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