8/17
前へ
/17ページ
次へ
「蓮さん、ご飯できたよ」 ミカのキスで起こされた。 朝なのか夜なのかも区別がつかない。 室内は薄暗く台所だけ明るかった。 室内に食欲をそそるいい匂いがしていた。 「カレー?」 「うん。お昼ごはん食べそびれちゃったから、蓮さんが寝てる間に作ったんだ」 「ありがとう」 俺の手を取ってテーブルにいざなう。ミカはパーカーを羽織っただけの格好で裾から白くてまっすぐな脚が伸びている。 「あとでまた見せてあげるから先に食べよう」 俺、そんなガン見してた?はずっ 「いただきます」 「沢山作ったから遠慮はいらないよ」 カレーはうまかった。 引きこもってから食事がうまいと感じたことはなかった。 味が全くしなくなったのだ。砂を噛むようなという言葉があるが、本当に砂や粘土みたいな物を咀嚼しているみたいだった。 母の料理が悪いわけではない。母はマメに料理をする人だし引きこもる前はどれも好きだった。 「すごく美味しいね。どうやって作ったの?」 「チキンカレーだよ、特売で買った市販のルー使って」 俺の舌はどうしたんだろう…… 「たくさん出しちゃったからたくさん食べないとね」 思わず笑ってしまった。 結局、俺はカレーを3杯食べた。 二人で風呂に入った。いいと言ったのにミカは俺の頭を洗ったり、背中をこすったりしたがった。 なんとなく元恋人の影がちらついた。 二人で浴槽に入り、ミカを後ろから抱きしめた。 「どうして?」 「ん?」 「どうして、死にたいの?」 俺は簡単にあの事件の事を話した。 「蓮さん、悪くないのに」 「俺が好きになったから」 「そんなに好きだったの?」 「うん。生まれ変わったら彼の上靴になりたいと思ってた」 「なにそれ?せめてパンツじゃない?」 「それは最高だけど、上靴でいいよ」 ミカは急に黙った。雰囲気が、変わった気がした。 何か怒らせるような事を言ってしまったか不安になった。 「俺が蓮さん位、彼を好きになっていたら彼は死ななかったのかな?」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加