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「彼氏がいたって話したでしょ、別れたんじゃなくて自殺したんだ。半年前に」  思ってもみなかった告白に、正直言葉を失った。 「彼、高校の同級生なんだけど、かっこよくて、成績もよくて、スポーツもできる人だった。何でもできるのに、偉そうな所がなくて、皆に慕われてた。  妥協ができない所があって何事にも努力を惜しまなかった。受験勉強も頑張った。物凄く頑張った。頑張って。頑張って。頑張って。 頑張っても失敗する事はあるでしょ?また頑張ればいい。でもまたという選択肢は彼にはなかった。もう、頑張る事はできなかったんだ。  初めは眠れなくなって、食事ができなくなって。そのうち、何もしたくないって家から出なくなった。予備校も行かなくなった。一日中、何もできなくなってた。」 「病院に行こうって言ったけど大丈夫だって言って聞いてくれなくてどんどんひどくなるばかりで」 「だから彼の両親に連絡したんだ。助けて下さいって」  「でも、彼の父親は、彼に、お前が弱いからそんな病気にかかるんだって、そんなんだから受験に失敗したんだって。しっかりしろって言った。今までの彼ならそう言ったら頑張れたんだ。でももう、無理だった。それから死にたいって言い出した 」 「毎日、彼に愛してるって繰り返し言った。愛してるから俺の側にいてって。足りなかったのかな?もっと言ったらどこにも行かなかったかな?」 「その日、ずっと彼は辛そうだった。一日中、目を離せなかった。ベッドに二人で入ってずっと抱きしめてた。約束して、もし俺がうっかり寝ちゃても死なないでね、死にたくなったら必ず起こしてねって言ったんだ。彼は死なないからゆっくり寝てって微笑んだ」  ミカが言葉を詰まらせた。 「なのに夜明け前、部屋を出て15階建てのマンションから飛び降りた。」 「即死だった。お葬式が終わって小さな箱に入った彼を見ても実感がない。ただ姿が見えないだけで今でもそこにいるような気がするんだ。風が吹くと彼に頬を撫でられたように感じる。一人で寝ている時も横にいるはずのない彼の手を探してしまう。空気中に彼の微粒子が漂っていて俺にここだよって言っている気がするんだ。」 「だから俺は、いつも彼に、聞くんだ。君は、それで寂しくないの?」  「答えなんかこない」  「俺は答える」 「今俺は、君がいなくてとても寂しいよ」 「ねぇ、蓮さん、もし君がいなくなったら俺はとても寂しいよ」  ミカはそう言った。そして笑顔を作ろうとして失敗した。  彼の頬に涙が溢れた。     
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