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行動の意味
昨日は全然眠れなかった。本当は前の日もその前日も眠れなかった。
リンにはやっぱり不信感がある。あの写真だって加工したようには見えなかった。頭から首の線もその下に繋がる胴体も筋肉の付き方が自然だった。
加工したならなんでリンの写真を誰がどこで撮ったんだろう。
それにリンだって否定しようと思えばあの時だって出来た。違うならもっと強く否定するはずだ。
眠れないのはリンが横にいないからだ。どうして気持ち悪い奴と一緒に寝るのかというと単純に一人で寝るのが怖いからだ。二人で同じベッドに寝るのが習慣になっていた。浅い眠りの時に無意識に手を伸ばして居場所を確認する。あぁリンは居ないんだったと思うと目が覚めてしまう。
リンの使っていた枕の匂いを吸い込んでみる。
これは何という行為か。ただの匂いの確認だ。
まるで行動だけみたら俺がリンに気があるように感じるがそれは絶対にない。自分の行動の意味が分からず複雑な気持ちになる。
両腕を折られた時、背中から頭が痛くなった。鈍痛ではなく拍動と共に来る激痛だった。何の痛みか戸惑い、悪い病気を罹ったかと思った。
「痛い、我慢できない。死んだりしない?」
「大丈夫、腕が動かせないから筋肉が硬くなっているみたい」
リンは痛みのある場所をホットタオルで温めてから指で硬くなった筋肉をほぐしていく。
「痛かったら言って」
経絡に入っていく指。ずらしながらまて次の経絡へ移動していく。
「痛い?」
「気持ちいい」
体がほどけていく。
リンの指はどうして痛い所を知っているんだ。
リンの大きな手はやんわりと大きな筋肉も包みほぐす。小さな筋肉は指で摘まれしごかれた。痛みと快感を行ったり来たりしながら体は正常に返っていく。
麻痺したような表皮が感覚を得て血液が通うのが分った。深部が和らぐと痛みが徐々に引いていった。
「りょうちゃん大丈夫?」
「うん。痛くなくなった」
「よかった。おやすみ」
魔法みたいだった。リン。
何となく、まどろみの中そんな事を思い出した。
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