優越感

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優越感

 リンと話をしようと思いながらも決心がつかないまま一週間が過ぎた。  桐生さんといた頃の記憶は曖昧な部分がある。そういえば同じ年頃の子供がいた。  名前は、覚えてない。  特に桐生さんに気に入られたかった俺とその子はいつも桐生さんの取り合いになっていた。  お手伝いして褒められたいから取り合って、お膝で絵本を読んでもらいたくてお膝の取り合いをして競い合っていた。  自分だけを可愛がってほしくて二人とも子供ながらにあざとく可愛さアピールしていた。その頃は気が付いていなかったけど、一人の男を取り合う恋敵だった。  桐生さんも俺達をたしなめながら優しい眼で見てくれていた。  あの誕生日の日、俺はその子に勝ったと思った。俺を、桐生さんが選んでくれたと。優越感で満たされた。嫌な性格はその頃から変わっていない。他人を思いやる余裕なんてない。  あの子は何処に行ったのだろう。  桐生さんには気安く過去の事を聞いてはいけないような気がする。本当ならそんな話しか共通の話題なんてないのに、不自然な位、過去の話はしない。  華やかなプロのモデル達に囲まれて彼らの写真を撮っているカメラマン。その人が俺の写真を撮っくれているのだ。 「りょう、君の写真を見せたらとても気に入ってくれた人がいたんだ。実物にも会ってみたいと。もうすぐ出版だよ。偉い人だから、遅れないように来てね」   桐生さんの声はなんとなく弾んでいた。  慌てて仕事帰りに桐生さんの家を訪ねた。 「心配ない。私もいるから」  不安を感づかれた。桐生さんはそう言った。
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