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三度目の死
俺は三回、殺された。
一回目は子供の頃、あの男に出会ってから。
二回目は、紙袋を被された時に。
三度目は、いつだっけ。
四度目はもうない。
もう生きていたくないから。
体を獰猛な肉食動物にあっちこっち生きたまま食いちぎられているような感じに似てる。
繰り返し繰り返し見る映像。自分がバラバラに食いちぎられる様子。だけどもう見飽きたよ。
血溜まりの中に食い散らかされた俺の死体がある。
完全に絶命しているのに、なんで俺はまだ苦しいんだよ。何度も死んだのに、どうして痛いんだよぉ。どぉして?苦しんだよぉぉぉぉ?
苦しいよぉぉぉぉぉー。
ママ。ママ。何でだよぉ?
「あっそっか」
食いちぎられただけじゃ死なないんだ。
ちゃんと息ができるんだ。
そうだよね。ママ。
ここは明るい。
近くの窓から飛ぼう。
フラフラするけど、地に足が着いている感覚はある。
「どおこかなぁ?」
明るい光に包まれて視界がはっきりしない。
あった。窓。
手に伝わる冷たいガラスの感覚。
確かめるように冷たいガラスを叩く。
ママ。ここからお外出ていいよね?
ママ、大好き。
俺、頑張って飛ぶね。
あっ。外だ。空気が冷たい。
『こっちへおいで、りょう』
ママ。ママ。
その胸に今すぐ抱きしめられたいよ。
体を窓側に乗り出した。
後は頭の方に重心を移すだけだ。
「りょうちゃん!!だめだよ!!」
知らない人から突然、怒られた!
「じゃますんな!!ママもあっち行って良いって言ったんだよ!!」
全身の力を使って抵抗する。
凄い力で抑えつけられた。
「やめろぉぉぉぉー!」
「大石君、先生呼んできて!」
「はい!」
「やだァァァァ!!」
「りょうちゃん。ママだよ。ママはあっちに行ってほしくないよ。かわいい、りょうちゃん、愛してる。愛してる」
「ママじゃない!ママはあっちいいって言う!!」
「ママだよ。ママはりょうちゃんにここにいて欲しい」
繋ぎ止めようと必死な声。ポタポタ生温かい雨を俺の顔に降らせてくる。
やめてよ。気持ち悪い。
温かい体温が息苦しい。
やめて。恥ずかしい。
やめて、そういうの慣れないんだ。
慣れないんだって。
この人、嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。
呼吸が整っていく。
でも、この世でたった一人、俺を愛してくれる人。
「あんたは誰?」
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