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「俺はそこまで話してない。片桐さんがキヨと偶然再会したって聞いた時には、興味ないふりしてた。キヨ、別れる時に片桐さんの連絡先教えてやったのに、アタックしなかったんだな」
「はい。でも俺……昔好きだったことは、この前先輩に告白しましたよ」
「えっ、そうなのか?」
「はい。あくまで昔の話として受け止めて貰いました。だから片桐先輩は俺が男性を好きなことを知ってます」
驚いた顔で一瞬固まった後、青柳は前髪を掻き上げながら答えた。
「マジか。じゃあ気付いたかも……いや、きっと気付かれてるぞ、俺が話したのがキヨのことだって。遠慮しますって断ったけど、今日レンが来るから一緒にテイパーのライブ観ないかって誘われてた。顔ぐらい出せよって粘られて、俺もここに住んでるって知られたら面倒だから黙ってて下さいって頼んだんだ」
あの時ボリュームを上げて部屋に呼び込もうとしてたのは学生達ではなく青柳で、1番大事な後輩の話になって慌てて彼等を追い出したのは、彼等の口から青柳の存在を知らされることを避ける為だったのかと納得した。でも――
「それなのに俺を待ってたんですか……?」
「ああ。キヨに自分の意志で俺を見つけて欲しかった」
思わず笑ってしまったら、青柳は眉を顰めた。
「おかしいか?」
「いえ、見つけて欲しいくせに隠れてたなんて可愛いですね」
照れて戸惑う青柳を見て、益々可愛いと思った。だからコーヒーを置いて立ち上がって、自分から彼に近付いてキスしたら、もっと激しいキスを返して囁かれた。
「可愛いのはそっちだろ。今すぐもっと可愛がりたいけれど、ここじゃダメだな」
そう言われて深く頷いた。
同じ建物の中に片桐がいる。
さっき知り合ってしまった学生達もいる。
「今からキヨの部屋に行っていいか?」
「もちろんです」
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