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「じゃあ車で行くか」
「はい」
「共用で使ってる車なんだ。鍵は片桐さんが持ってる」
「え、あの――」
「キヨも来い」
既に挨拶はしたけれど、こうして青柳と再会出来た礼をして帰るのが礼儀だろうとは思ったが、そのことを報告するのだと考えるとドキドキした。私の先を歩く青柳も緊張していたのだろう。階段を上る間何も話さなかった。
そして青柳は片桐の部屋のドアを開けた。
部屋にはまだCrying Tapirが流れていてた。
「失礼します」
「おう」
私が青柳の背中から顔を出して頭を下げても、片桐は全く驚かなかった。
「蓮沼送って行くので車の鍵お願いします」
「ああ、うん」
片桐はすぐに鍵を取ってくれたが私達には近付かず、手にした鍵をテーブルの上に置いてその周りに椅子を並べた。
「その前にちょっと話そう。ここ来て座れ」
青柳は苦笑いして靴を脱ぎ、私も彼に従った。そして3人でテーブルを囲むと、片桐は青柳に確認した。
「あの話、レンのことだったのか?」
「はい」
青柳の返事に頷くと、片桐は私に尋ねた。
「レンは今好きな人いるのか?」
恥ずかしくて一瞬黙ってしまった。でも勇気を出して、私は答えた。
「はい。今というか……もうずっと前から青柳さんが好きです」
「俺よりも?」
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