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「……はい」
青柳の顔を見たら、切れ長の目を見開いていた。それを見た片桐は笑顔で頷いた。
「良かったな、青柳。じゃあレン、こいつ頼むわ。強そうに見えるけど、心身共に弱いから」
「弱いって、そんなにハッキリ――」
「レンは逆だよな。弱そうに見えるけど強い。だからもっと自信持って堂々と自己主張しろよ。遠慮して黙るのはダメだ。相手の気持ちなんていくら思いやったってよくわかんねーんだから、本音ぶつけて歩み寄れ。そうしないとまたすれ違うぞ」
強いって言って貰えたのに、涙が溢れてきてしまった。すると片桐は立ち上がって私と青柳を背中から抱き締めた。
「それでもまた上手く行かなくなったら俺に相談しろ。お前等のことは弟だと思ってるから、どんな話でも俺は真っ直ぐ真剣に聞いてやるよ」
「お前等って……俺も弟ですか?」
「ああ。ちょっと先に生まれただけだろ。関係ねー、俺が兄貴だ」
片桐は、瞳を潤ませて笑う青柳と私の髪を撫で回してクシャクシャにすると、ポンと背中を叩いた。
「よし、車の鍵持ってけ」
「はい。ありがとうございます」
立ち上がって頭を下げて、玄関でもう一度挨拶して部屋を出ると、青柳は安堵のため息をついた。
「じゃあ行こう」
「はい」
車に乗り込む時に2階を見上げたら片桐が窓から顔を出していた。
「レン、またな」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
そして車に乗り込むと、思わず呟いてしまった。
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