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「俺やっぱり片桐先輩のこと大好きです」
すると青柳は私より大きな声で答えた。
「俺だって大好きだよ。兄貴だからな」
膝の上でギュッと手を握られて頷くと、車が動き始めた。途中で買い物をしたけれど、すぐに私のアパートに到着した。
「こんなに近くに住んでたのか」
「はい」
祖父母の家の跡地で父親と伯父のアパートだと話すと、もしも両親や親戚に会ったらどうするかと聞かれた。
関係がバレたらカミングアウトするしかない。
両親や親戚にどう反応されても、根気よく話し合うしかない。
もう青柳と別れることはないから。
命ある限り共に生きると決めたから。
そう覚悟して、私は青柳を部屋に連れ込んだ。
「へー、ここがキヨの部屋か」
片桐が送ってくれる可能性を考えて掃除はしたけれど、特別オシャレではない部屋を見られると恥ずかしかった。
「何か飲みます? すみません、コーヒーはなくて――」
「そんなのいいから、早くキヨが欲しい。キヨは?」
後ろから抱き締められて、全身の血がざわめいた。片桐に抱き締められた時の喜びとは質が違う。こんな風に体が沸き立つのは相手が青柳の時だけだ。
「俺も今すぐ青柳さんが欲しいです」
「それ本音? 本当はここじゃ嫌だとか思ってない?」
このフロアには他人は入居していない。隣は伯父の部屋だが、東京に来た時に使うだけなのでほぼ空き部屋だ。それを伝えると青柳も安心してくれたが、念の為音楽をかけた。
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