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身勝手な人達
都内のファストフード店で、男女4人の高校生達が我が物顔で騒ぎ立てている。
「てゆーかさぁ、あの地味子は笑えたよねー」
金髪の女子が言うと、彼らは声を上げて笑う。彼女の名は香留菜。高校デビューと共に反抗期を迎えた困った子だ。
「それな。マジで傑作だったわ」
クラスメイトの摩周は、猿のように手を叩きながら笑う。
「あんなブスが乃亜に好かれるわけないじゃん。ねー、乃亜」
茶髪ショートの璃々花は、隣に座っている男子に話しかける。乃亜と呼ばれた少年はとても顔立ちが整っていて、グレーに染めた髪もよく似合っているが、性格の悪さが顔から滲み出ている。
「いやー、あんなきしょい上目遣い初めて見たわ。貞子よりホラーだったな」
乃亜の言葉に、彼らはさらに大声で笑う。
気難しそうな中年男性が、わざとらしく咳払いをする。乃亜は舌打ちすると、男性の席へ行く。
「なに、おっさん」
「いや、喉の調子が悪くて……」
高身長の乃亜に睨まれ、男性はそそくさと荷物をまとめて店から出てしまった。
「乃亜サイコー!」
「だっせ、あのジジィ」
「ビビるんなら最初から黙っとけっての」
3人は乃亜を持ち上げる。乃亜はまんざらでもないという顔で、どかっと座った。
「どーでもいいけどさ、あの地味子不登校なんだって?」
乃亜は香留菜に話を振る。
「そうそう。おかげで教室が明るくなったよねー。やっぱあんな地味子邪魔だし?」
「あんなことで不登校とかウケるわ。こんなの冗談だろーよな」
摩周は中央にスマホを置いた。動画が流れており、大人しそうな黒髪の女子と、背の高い男子が映っている。男子は首から下しか映っていない。
『木村さん、俺、君のことが好きだからさ、付き合ってくんない?』
『えっと、はい……私でよければ……』
女子はほんのり頬を染め、男子を見上げている。
『なーんっつって。嘘告に決まってんじゃん。誰がお前みたいなカビ生えてそうなブスのこと好きになるかよ。せめて化粧くらいしたら? おブスちゃん』
男子はポケットからカラースプレーを取り出すと、女子に噴きかけた。顔をメインに真っ赤に染まった女子は、その場にうずくまって泣いてしまう。
『いえーい! ドッキリ大成功!』
『一瞬だけでも夢みれてよかったでちゅねー、おブスちゃん』
『ついでにブスい顔も隠れてよかったじゃん』
『はー、マジきつかったわ。お前らなんかおごれよ』
女子の泣き声と、4人の楽しそうな声が聞こえるが、姿が映っているのは被害にあった女子だけだ。
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