バンド

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 「今日嬉しいことがあったの。聞いてほしい」 嬉しそうにナナは答えた。ナナが嬉しいとこっちも嬉しくなっちゃう。 「え、なになに?知りたい!」俺はナナの事が知れるだけでもうれしい。  「私、ネットに歌声上げてたらバンドの人にボーカルでオファーされちゃった。」聞いた瞬間、遠い存在になったような気がした。やっぱり、自分の好きな人はとても魅力的な人が多くて、だがその魅力は他の人にも目を惹き付けられる。だから好きになるのかもしれない。だから、自分のものにはならないのかもしれない。自分より存在が大きい人になって発見されて、自分より良い人に出会って付き合うのかな、高値の花になってしまって、また片思いのまま終わってしまうのかなと考えると悔しくて堪らなかった。  「すごいじゃん、おめでとう」そう言葉を掛けてあげる事しかできなかった。本当はいろんな感情が渦巻いていた。「だから、その人たちのバンドに入る事にしたの。」と得意げに話している。ネットの募集でバンド結成なんて他の世界の話だと思っていた。こっちはまだ、ネットでオフ会すらやったことがないので、それ以上のバンド結成の話が出るのは現実とは思えなかった。 ナナの存在は大きくなり、俺はナナのサクセスストーリーを聞かされている気分になった。自分が上手くいってないので、なんだか遠い存在になっていたし、ナナにとっちゃ俺はどういう存在なのか問正しかった。けど、友達という言葉は聞きたくなかったので聞けなかった。
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