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2人の時間
「いいですよー。」
俺は慣れているかのような返事をした。実際は裏返ってたと思う。内心は心臓がバクバクしている。女の子と2人きり。何を話せばいいんだろう。とりあえずここはリードして、良いところを見せなきゃ…と思っている矢先彼女から語り掛けられた。
「プール君さ、彼女とかいるの?」
なんだその質問は。もしかして、俺のことが気になっているのか。
「居ないですよー。」
()年齢(笑)。まず彼女の居たことのない俺にとっちゃそういう恋人が出来る工程を知りたいくらいだ。自分では恋心を抱くことが多いのだがずっと見ていることが多かった。だがそれもそうだ。恋心を抱く女性は他の人にも人気のある人ばかりだ。その女性が他の男の子に声を掛けられていてその男の人に比べてみれば自分なんか劣って見える。とても、太刀打ちが出来ない。俺には恋愛は出来ないのかもしれない。俺の人生には恋はあっても恋愛はないのだ。
「いつから居ないの?」
俺に興味がある素振りを見せている。だが、それは納得が出来る。昔から周りからええ声だと言われていて声だけは自信があった。クラスに国語の朗読でイキって大きい声で朗読していたやつが居ただろう。俺はその一人だ。人間というのは褒められたら自信が付くし調子に乗るのだ。
「ずっと出来たことがないです。」と俺は少々苦笑い気味に素直に答えて「ふーん、じゃあ純粋だねぇ」彼女は少し鼻で笑ったように答えた。性の経験と、未成年のタバコと飲酒は似ている。経験者は未経験者に対して少し上に立ったような気分になる。でも実際に経験したら行為自体は大したことはない。だが、未経験者にとって、星のような存在にみえる。先ほど、大したことはないといったが、きっかけによっちゃ大きな経験にもなる。
「ナナさんは恋人いるんですか?」恐る恐る聞いてみた。好意があった俺は、彼女に居ないという返事を欲しかった。付き合える付き合えない前提に男というのは気を引いてみるか否か態度を変える生き物である。
「いないよー、2年前に別れたっきりだね」と彼女は答えた。嬉しかった。でも2年前に別れたっていうことは付き合った事があるっていう事。その経験があるだけやっぱりモテる人なんだな。俺とは違う世界で生きていると思った。童貞イキリ野郎としては同じ未経験であったほうが同じ立場で話しやすく口説いてしまうのだ。
「そうなんですね」平気なふりをしてそう答えた。一度お付き合いしたことのある経験を知ってそういう恋愛人種において俺は負けている気がする。なんだか敗北した気になっていた。
「プール君っていくつなの?」とナナ・テスカトリは尋ねた。慣れている。この女、慣れている。普段からこうやって色んな男の人に年齢を聞いて恋愛対象か判断しているに違いない。「15歳です。ナナさんはいくつですか」俺は女の子と話す機会がないので緊張しているが、いつも異性の女性とお話しているかのような慣れた口調で質問返しをした。
「18歳だよー。」7はそう発言した。18歳。それは女子高生と大人になる狭間、15歳のおれにとっちゃとてもいやらしい生き物だ。きゃぴきゃぴでいわゆる一番ギャルが多い年齢ではないのだろうか。ナナの少し責めたような性格と口調は俺の頭の中のイメージをギャルだと決定付けた。
「年上だ…」俺はあっけに取られたかのような口調でそう答えた。リードする感じがお姉さんっぽかったから想像通りだ。学生生活において上級生とは部活にも入っていない限り話す機会なんてない。ましては異性の上級生なんてもってのほかだ。憧れの存在にすら感じている。まさか帰宅部の俺にそういう機会が与えられるなんて考えもしなかった。
「そうだね、年上の人好き?」色っぽいお姉さんは期待を込められたかのように聞いてきて「好きです。」とさくらんぼ男子は答えた。
(高校生にとって高学年のお姉さんなんて憧れで大好物に決まってるじゃないか。と心の中で叫んだ。)
「プール君ってなんかMっぽいし、弟キャラみたいだからかわいい。」「私は、Sだからちょうどいい感じがする。」誘惑するかのように魔女は発言した。
「え?それってどういう....」動揺が隠せない。こいつ誘っているのか。こういう時、どう返せば出来る男風になれるのかわからない。
「ううん、なーんでもない♪」
(その時俺はものすごく心臓が締め付けられた。好きだ。)
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