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「はぁ?誰と?」
しまったという表情をしている雅人。
本当は聞きたくなかったんだと思う。
朝帰りの理由も本当は聞きたい、でも臆病で聞けない。
私もそう。雅人に聞きたいこと、言いたいこと、たくさんあるけど言えない。
私たち、いつの間にか本音が言えなくなって、駆け引きしている関係になってしまった。
「亮二とでかけてくる」
「あぁ、亮二か……」
自分の知っている男で安心している。
亮二と私には何も起こらないって安心しているようだ。
「二人きりだけど、何も思わないの?」
「いや、だって、亮二だよね?」
「亮二は……高校の頃から好きだったって言ってくれた」
「は?」
「デートしてほしいって言ってくれた。自分のことも男として考えてほしいって」
「雅人は……私のこと何だと思っているの?友達?お姉ちゃん?お母さん?」
「結婚しているから妻だろ!」
「……セックスの対象にもみてくれない、朝帰りしても心配してくれない……私のことを女として見てくれる人と一緒にいたいの」
「それが亮二だっていうのか」
「分からない。だから、これから考える。離婚してくれないのなら、身体の関係も持たない」
「好きな女を目の前にして、関係を持たない男がいるのかよ!」
「……いるじゃない、私の目の前に」
「それは……」
「違うね。私のことは好きじゃないから……か」
「愛莉!」
言いたいことは伝えた。
自分も傷ついたけど、少しはすっきりした。
私たち仮面夫婦には、もう戻れないもの。
これでいい。
これで私も、少しは前を向ける。
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