覚えている快感

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「あ!そういえば、春樹君と愛莉付き合っていたよね!」 「あ……うん」 「今日遅れるか来れないかもって~アメリカにいて今日帰ってくるってさ」 「そうなんだ……」 「残念そうな顔して~結婚して幸せなんでしょう!」 「まぁ……うん」 とてもセックスレスなんですなんて言えなかった。 こういう嘘をつくのがうまい大人にいつになったらなれるのだろう。 美味しいお酒に美味しいご飯。 久しぶりに会った同窓生とは 話がつきなかった。 同窓会が終わるころには 私はできあがっていた。 「みんなに久しぶりに会えたし、二次会行こう!」 そんな風に切り出すタイプではないと 自分では思っていたけど お酒が入って大胆になっていた。 「ごめん、子供が待っているから」 「旦那が迎えに来ててさ」 一番聞きたくない言葉を聞いた。 どちらの言葉も今の私には胸が締め付けられる。 「愛莉も脚がふらついているよ~一緒に帰ろうよ」 家で待っている子供や旦那さん。 そんな家庭を作りたかった。 どこで間違ってしまったんだろう。 「愛莉?気分でも悪いの?大丈夫?」 涙がこぼれ落ちそう。 下を向いて、夜なのをいいことに 涙が見えないように必死に下を向いていた。 今泣いているのがばれたら せっかくの楽しい雰囲気が台無しだ。
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