覚えている快感

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「愛莉……今まで辛かったな」 頭を撫でられるのは 何年振りだろう。 優しく頭をなでて、おでこにキスをしてくる。 この人はいつもそう。 いつも優しくて、欲しい言葉もくれて、大事にしてくれる。 だけど―― “ピリリリリッ” 「……はい。あ、うん……え?今から?」 そうだ、別れた理由を思い出した。 春樹は私にすごく優しくて彼氏としては申し分なかった。 だけど、誰にでも優しかった。 今の電話だって女の子が泣いて電話してきている。 きっと、この娘も春樹のことが好きなんだ。 春樹が電話をしている間に起き上がって 身支度を整えて、バッグを手に取った。 「愛莉?」 「春樹……ごめんね、今日は迷惑をかけて。私帰るね」 「ちょっと待って!」 「春樹…今から電話してきた子のところに行くんでしょ?」 「そうだけど……」 「春樹のそういうところが好きで、大好きで……大嫌いだった」
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