覚えている快感

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「……ただいま」 家に帰ると玄関には雅人の靴があった。 家にはいるんだ……でも、朝帰りをする私には興味ははいってことか。 虚しい溜息を、安らげるはずの家に帰ってすぐについてしまった。 「おかえり」 まだ寝ているかと思ったら 起きてテレビを観ていた雅人。 声や表情からは怒っているわけでもなさそうだけど 平然としているのが不思議だ。 「起きていたんだ……」 「寝れると思うか?」 「え……?」 テレビの前のテーブルにはたくさんの缶コーヒー 灰皿にはタバコが山盛りになって溢れていた。 私が帰って来なくてイライラしていたのが分かる。 「はぁ……」 つかれたため息が、部屋の空気をより一層重くさせた。 この空気が、私は嫌だ。 この家に……雅人と一緒にいたくない…… 「着替えたら出かけてくる」
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