幸せのルーティーン

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高校生になった息子はお弁当を毎朝自分で作っている。 お母さんの負担を少しでも減らしたいという本人からの申し出だ。 早朝から支度をして、おかずは冷ましてからお弁当箱につめるんだけど、 小学生の双子の妹が起きてきては「味見したい」「卵焼きのはじっこちょうだい!」といい、息子が「しょうがないなー!」と食べさせるのを見ていると、 朝から幸せな気持ちになる。しかし妻は朝が早いためその光景を拝むことができない。わたしだけに与えられた特別な時間…。こんな幸せな時間を私だけが噛みしめていいものか? 本当はこの幸せな時間を妻と共に分かち合いたい。二人で隣同士並んで子供たちの一連のやり取りを後ろから見守る。きっと幸せすぎてニヤニヤが止まらないだろう。妻よ、いつもありがとう。私はあなたと結婚できて本当に幸せだ。って、そんな照れ臭いこと本人には言えないんだけど。そうこうしているうちに子供たちが家を出る時間になる。息子と二人の娘はいつも一緒に家を出る。娘たちはそれぞれ赤いランドセルを背負って出陣のときを今か今かと待ち構えている。そんな元気な姿も微笑ましい。家を出る前、息子は必ず私にきちんと挨拶をしてから家を出る。今まで挨拶を忘れて家を出たことなんて一度もないんじゃないかな?  「父さん、行ってきます。 ほら、お前たちもお父さんに行ってきますは? 」 「はーい、お父さん行ってきまーす」 「お、お父さん、い、行ってきます」 私は無言で彼らに微笑みかける。 「よし、じゃあ行こう! 」玄関から聞こえる無邪気な笑い声。そして静かにドアが閉まる。ガチャっと鍵がかかる。あたりは静寂に包まれる。 私は本当に幸せものだ。こんな幸せな毎日がずっと続けばいいのに…。 私にはどうしても克服できない弱点が一つだけある。
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