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エリンさんが退室すると、早速僕はシオンさんに中庭への付き添いをお願いしてみた。
「あれはとても綺麗な薔薇でしたわ。是非シン様もご覧になってください。喜んでお供します」
「ありがとうございます。ではよろしくお願いします」
シオンさんに手を引かれて廊下を歩く。
お腹が大きくなって足元が見えないので手を引いてもらえると安心だ。
「シン様、あの時お帰りにならないでここに留まってくださって……ありがとうございます」
以前、僕がここにやって来た時に通った扉を見に行った時の話をしているのだろう。
あの時、僕が帰るんだと勘違いしたシオンさんが必死に止めてくれたんだよな。
「もう、ここが僕の家ですから。どこにも行きませんよ」
「ありがとうございます。シン様が来られてから、この国は少しずつ良くなっています。魔法の力のない者も生きやすく…音楽という楽しみもできました」
僕がシュウに教えた歌を、シュウが街で教えて……それが広がって街では音楽が流行っているそうだ。
自分たちで楽器も開発して作っているようでシュウが凄いんだぜと得意げに話していた。
「こうしてお世継ぎも産んでくださる……シン様は本当に我が国の女神様です」
「大袈裟な。僕は何もしてませんよ」
僕はただ、レンさんを愛して愛されただけだ。それだけなのにそんな風に言われると困ってしまう。
けれど必要としてもらえているのは嬉しかった。
城の皆は家族のいなかった僕の本当の家族みたいだ。
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