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「ああ王妃様。いいところでお会いできました」
ぽかぽかと温かい気持ちになっていた僕に後ろから誰かが声をかけてきた。
「あら、ゼノ様。この時間にお部屋にいらっしゃらないのはお珍しいですね」
ゼノさんだ。
笑顔で挨拶するゼノさんに僕も笑顔を返した。
「王妃様、今日もお美しい。王もハルも視察に出かけておりますからな。城の護りに穴がないか見て回っていたのです」
「それは…ご苦労さまです。シン様に何かご用ですか?」
ゼノさんはにこにこしながら僕に向き直った。
うん。
別に怖くない。
この前の嫌な感じはやはり気のせいだったのかな。
「実は先々代の王妃様の書き付けが見つかりましてな。私には読めないので何が書かれているのか王妃様に読んでいただけないかと…」
「王妃様の書き付け、ですか?」
それは見てみたい。
僕の知らないお母さんの何が書かれているのかすごく気になる。
「今、それはお持ちなのですか?」
ゼノさんは笑いながら首を振った。
「貴重なものなので部屋に大事に仕舞っております。王妃様がよろしければこれから部屋に見に来ては貰えませんか?」
「これから……ですか……」
行きたいけど……。
ボクはシオンさんをチラリと見た。
シオンさん、ついてきてくれるかな。
ゼノさんと二人きりでお部屋に居るのはちょっと嫌だな……。
僕の気持ちをシオンさんは察してくれたようだ。
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