扉の向こうは

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僕はトイレに行くため仕方なく階段を降りて一番手前にいた派手な鎧の人に声を掛けた。 「すみません、あの、トイレってどこですか?」 僕が声をかけるとその人はゆっくりと顔を上げ、僕の顔を真っ直ぐ見つめてきた。 ハリウッド映画スターみたいな整った顔。 蜂蜜色の金髪に少しグレーがかった青い目のイケメンに見つめられて居心地が悪い。 確かにパンツ一丁の僕は場違いでじろじろ見たくなるのは分かるけどさ。 緊急事態なんだから早くトイレに案内して欲しい。 「なんと美しい……。さすが神の遣い……」 うっとりと僕を見つめてからイケメンは僕の手を取って甲に口付けてきた。 「ちょ……何?何するんですか!」 「麗しい方、宜しければお名前を教えてはいただけませんか?」 麗しいって僕のこと? これ映画の撮影? それとも壮大なドッキリなの? 「僕の名前は山口慎太郎です。それより、トイレを貸していただきたいんですけど…」 「ヤマグチシンタロウ、貴方様は長い名前なのですね。私はレンと申します」 レンと名乗ったイケメンはふわりと僕を抱き上げると平伏す人々に高らかに宣言した。 「神は我が願いをお聞き届けになって神の国より花嫁を授けてくださった。これで我が国は安泰だ!」 再びうおおおおぉと歓声が沸き起こる。 何言ってんの? 花嫁って僕のこと? パンツ一丁なんだから僕が男だって分かるだろうに何言ってるんだ。 「あの、レンさん。僕、もう漏れそうなんで……とりあえずトイレに早く行かせてください!」
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