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扉を詳しく見ようと階段を登ろうとすると、僕の上着の裾をシオンさんがぎゅっと掴んだ。
「シオンさん?」
「………天界に戻られるおつもりなのですか?ここで誰かに命を狙われたから……王様のことを置いていかれるのですか?」
僕を引き留めようとシオンさんは上着を掴む手に力を込めた。
「私はお美しくてお優しいシン様のことが大好きです。私以上に王様はシン様を愛していらっしゃいます……。どうか私達を置いて帰らないでください……」
僕を見つめるシオンさんの瞳から涙が零れる。
扉はあの時も開かなかった。
別に今帰るつもりではない。
どういう仕組みなのか見たかっただけなんだけど……。
「帰らないですよ……。泣かないでください。少し疲れましたからもう部屋に帰りましょう」
「シン様……」
シオンさんは涙を拭うと頷いて僕と神殿から出た。
神殿の扉を閉めるまでシオンさんは僕の上着から手を離さなかった…。
「シン様のお召し物に皺を作ってしまい申し訳ありませんでした…」
強く掴まれた上着は皺になっている。
それをシオンさんは何度も僕に詫びてくれた。
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