疑惑

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横からノートを覗き込んだザインさんも首を傾げている。 「シン様、私はこんな文字を見たことがありません。これが天界の文字なのですね」 僕には文字は全部同じに見えるけど……? もしかして、僕の目には文字は自動的に日本語に変換して見えているんだろうか。 この世界の文字も違和感なく読んでいたけど、よく考えたら別世界の文字が日本語なわけないじゃないか。 僕は三冊の物語の本と王妃様のノートを借りて書物庫を後にした。 ミアさんの選んでくれた物語の一冊目は冒険活劇で、僕は時間も忘れて夢中になって読んでいた。 気付けば夕食の時間で、部屋に食事を運んできたシオンさんに「一度本を置いてしっかり召し上がってください」と呆れるように注意されて…。 急いで食べてまた続きを読んでいると部屋のドアが開いてレンさんが帰って来た。 「シン、ただいま帰りました」 「レンさん、おかえりなさい」 レンさんは僕をふわりと抱きしめると軽くキスをする。 「本を読んでいたのですか?」 「ええ。今日書物庫でミアさんからお借りしたのですけど……すごく面白くて時間を忘れるくらい夢中になっちゃいました」
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