お兄ちゃんだから

1/2
前へ
/11ページ
次へ

お兄ちゃんだから

「なあ、兄ちゃんってば。聞いてんの?」 すっかり大きくなった千歳が、コタツの中で、僕の足を蹴ってくる。 「ああ、ハイハイ。聞いてるよ。何だっけ」 「だから、蛇のマフラーだよ。これ、どうしたらいいと思う?」 「……じゃあ、僕がもらってあげる」 僕は答えて、その趣味の悪いマフラーを、自分の首に巻きつけた。 「ああっ、ちょっと。ダメ。あげねーよ。俺がもらったんだかんな」 千歳は慌てて、ぐいぐいマフラーを引っ張った。 僕の首がゆるやかに締まる。 「うう、苦しい。やめなさい、返すから。……ねえ、ちい坊」 「何だよ?」 「実は、悩んでるんじゃなくて、自慢してるんでしょう」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加