ヘビギライ

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ヘビギライ

千歳が蛇ギライになったのには、理由がある。 あれは確か、僕が小学四年、芽衣子が三年……、千歳はまだ幼稚園児だったと思う。 夏休み中だった。 熱い日で、ミンミン蝉が鳴いていた。 僕たちは、線路わきの小道を、冒険気分で歩いていた。 クマザサやエノコロ草がうっそうと茂った、未舗装の田舎道だ。 別にどこに行くという当てもなかった。 年長の僕が先頭に立ち、虫取り籠なんか持って、そのくせ虫は一匹もつかまえていなかった。 ガサリと、前方の茂みから音が聞こえた。 ちびの千歳が、おびえて肩を震わせた。 「気を付けて。蛇かもしれない」 僕は言った。 芽衣子は、それを無視して、茂みの中に踏み入った。
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