二〇一九年一月二十三日

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二〇一九年一月二十三日

 坂下浩史は、捜査の合間にコンビニに立ち寄った。  レジ前を通り過ぎて、ホットドリンクコーナーの前に立ち、お気に入りの馴染みある、いつものブラックの缶コーヒーを手に取った。  坂下は缶コーヒー派だった。コンビニの商品レベルが上がり、充実していく品揃えには舌を巻くが、それでも缶コーヒーから挽きたての豆から淹れるカップのコーヒーに移行するという思考はなかった。理由は特にない。ただ、缶コーヒーが好きだという理由だけだ。  レジの前には三人の客が並んでいた。チラチラと周りに目を向けながら列で待っている時、ふと、隣のレジに並ぶ一人の男の手元に目がいった。  坂下の目には、男の手元に釘付けになった。  そのまま男の顔を確認した。だが、過去に顔を合わせた参考人とは一致しなかった。全く見覚えのない顔だ。  まさかこいつが? すぐに勘ぐりに入った。だが、確固たる証拠はない。気軽に声をかける訳にはいかなかった。しかし、易々と見過ごしておくわけにもいかない。  男はQRコード決済で、弁当にお茶。それと煙草を買って、店を後にした。  一月二十三日の木曜日。十三時十二分。その記憶さえあれば、この店のレジの履歴から、ある程度、男の詳細を知るすることができるだろう。上手くいけば、カード会社から男の名前はもちろん、住所までたどり着く事ができるはずだ。  しかし、あの男は本当に事件の犯人なのだろうか? そんな疑問が頭に過ぎった。
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