二〇〇八年十一月三十日。

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二〇〇八年十一月三十日。

 まだ陽が昇っていない時間。俺は、目を覚ました。  それは目覚ましが鳴ったからではない。感じるはずのない物音が耳に入ったからだ。  意識が薄っすらと覚めて、目を開けた時、すぐ側に、何かの気配を感じた。  体を起こして、その影に目を向けた。その時、何かが、こちらに指した。  そう気が付いた時には、もう遅かった。  それが何か把握する暇もなく、辺りが突然に真っ白に覆われていったのだ。    その瞬間に、すぐに口を塞ぎ、顔をベッドに埋めた。  咳き込み、息がうまくできなかったのだ。  何が起きたのか、訳がわからなかった。後に、それが消化器を向けられたのだと知った。  息をしたい。その想いだけが頭を埋め尽くした。意識と体が求めるのは、正常な空気だった。  無我夢中で、異物から自分を守った。顔に掛け布団を覆い、逃げ道を探した。しかし、それだけでは拉致が開かないと悟った。  布団を被ったまま立ち上がり、窓の方向へ向かった。何年も住んでいる家だ。窓の場所くらいは、体が覚えている。  すぐに閉鍵している窓を開き、全開にして外に顔を出した。  とにかく、まともな空気を浴びることに必死だった。  その間に、背後では足音が遠ざかっていくのがわかった。  やられた。  俺の頭に霞んだのは、非情な現実だった。
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