彼女のマフラー

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「祐介、また来てくれたの」  入るなり、ベッドの上の芹那がそんな声で迎えてくれる。 「毎日来るって言っただろ」 「絶対続かないと思ったけどなー。根性あるね」 「芹那は口が悪い。黙ってたら可愛いんだから、黙ってろよ」 「やだもーん。おしゃべり止めたら死んじゃう」 「やれやれ」  そう大げさにため息をついて見せたが、僕は芹那の話し相手になるためにここへ来ているのだ。  彼女の望みを出来る限り叶えてやるのが、僕の望み。  本当は仕事をやめてつきっきりで看病してやったっていい。けれど、それじゃ彼女が気を使うから、僕は暇つぶしみたいな顔をしてここへ通っている。  芹那が病気なのは知っていたけれど、いつも元気そうだったから、まだまだ大丈夫なんだと思っていた。  こんなに急に悪化するなんて、考えてもいなかった。  芹那はいわゆる不治の病で、もう永くはない。  僕らはそれを口にしないけれど、どちらもそれをよく知っている。
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