彼女のマフラー

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「今日、寒いね」  芹那が言う。 「暖房あげてもらおうか?」 「ううん、ここは大丈夫。さっき廊下に出たら結構冷えてたから」 「そっか」  一旦会話が途切れる。  僕は芹那の横顔を窺い、何気ない風を装って訊ねた。 「芹那、なんかほしい物ある?」 「ほしい物?」  急に思いついたみたいに訊いたけど、心に決めていたことだった。  彼女の望みを叶えるのが、僕の望み。もしかしたら最後の願いかも知れない。芹那がほしい物なら、どんな手を使ってでも手に入れるつもりだった。  すると芹那はぽつりとこう答えた。 「マフラー……」
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