彼女のマフラー

　白い天井、白い壁。白い廊下に白衣の医師。
　どこもかしこも白いこの病院を、僕は黒いダウンジャケットを着て歩く。

　今日は手ぶらだ。毎日お見舞いの品を持ってきたら、むこうも気がひけるだろう。
　ポケットから手を出して、歩く速度を少し上げる。目的の病室まであと少し。

「中も外も白いな……」

　窓の外の景色には薄い毛布をかけたみたいに、浅く雪が積もっている。病室から外を見れば、僕のダウンジャケットは目立つはずだ。

　病室の前、一度頬をピシャリと叩いて深く息を吸い込み、それから扉を開ける。