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※※※ 世界一の熱帯雨林、南米アマゾン。哺乳類から昆虫に至るまで豊かな生物相を有している。ここでの頂点捕食者は、ネコ科の中ではアゴの強さが相対的にはトラやライオンを上回るジャガー。ワニの一種 カイマンもジャガーの獲物のひとつである。
国としてはコロンビア、この熱帯雨林に足を踏み込む一介の生物学者。彼の専門はネコ科動物。今回の調査はジャガーを含め、南米に生息する他のネコ科動物のオセロット、ジャガーネコ、マーゲイなどが対象である。ネコ科動物は警戒心が強く、なかなか姿を確認できないまま五日が経過。それでも、遂に待ちに待ったジャガーを確認する。川辺で身を伏せ、何か獲物を見つけた様子。カピバラやオオカワウソがジャガーに気づいて逃げ出すが、ジャガーの方は気にせず、身を伏せたままゆっくりと何かに近づいて行く。
その眼光の先にいるのは、ワニの一種メガネカイマン。ワニの中では中ぐらいのサイズだ。一気にに川の中にダイブし、カイマンの攻撃を受けないよう巧みに躱し、その頭部に強靭な牙を突き立てる。カイマンは身動き取れず、そのまま岸辺に引き上げられようとしている。と、その時、水中からとてつもないスケールの太さの大蛇が顔を出し、ジャガーごとカイマンを締め付けにかかる。
“アナコンダ?” その生物学者の頭の中を過る。だが、スケールが違い過ぎる。じわじわと締め付けるその大蛇ーーー。カイマンのものか、それともジャガーのものか、骨の砕ける音が不気味に聞こえてくる。南米最強ジャガーもその大蛇にはなす術が無かったーーーーーーーー。
************この大蛇も『ExーBeast』。名は ティタノボア。体長はアナコンダの倍以上、約12m。体重は1トン超え、まさにモンスター。************
あまりの迫力に圧倒され、その学者はその場から一目散に逃げ出す。何度も転びそうになりながら、生い茂る枝や葉っぱを払いのけ必死の形相だ。
1キロ以上は走ったか、さすがに疲れが出始め足を止めその場に蹲る。
その時、すぐ右横を地響きかと思うほどの大きな足音が通り抜けて行く。“こ、ここはアフリカじゃない、南米だ…。こんな大型動物がいる訳がない!” だが、生物学者としての好奇心が恐怖に勝り、思い切って顔を上げるとーーーーーー。
見たこともない巨獣が、目の前をのし歩いている。この巨獣は自分のことは眼中にはないようだ。そして、ゆっくりと後ろ足で立ち上がり静かに葉っぱを手繰り寄せ口に持っていった。
この生物学者がここコロンビアに訪れたのは約三年ぶり。その間に、見慣れぬ生物達が支配する土地となっていたーーーーー。
*************この獣も『ExーBeast』。名は メガテリウム・アメリカヌム。体長は6m、体重に至っては4〜6トン。かつては南米大陸を闊歩していた巨大ナマケモノ。****************
※※※インド洋に浮かぶ、南国の楽園『モルジブ共和国』。観光業が主流で人口よりも多くの観光客が訪れる。約1200にも及ぶ島があり、観察される海洋生物にはマンタことオニイトマキエイ、ウミガメの一種タイマイ、そしてジンベイザメなどが挙げられる。
その数多くある島の一つ、フィハルホヒ島のビーチ。地元民や観光客でごった返している。すると、少し沖合で浮き輪に捕まっていた少女が突然、金切り声を上げる。少女指差した先にはーーーー、とてつもなく巨大なサメの背鰭が蛇行しながら、こちらに向かって来ている。桁違いの大きさの背鰭である。監視員も気づき、慌てて遊泳客を浜まで誘導する。だが、一人の少年が気付くのが遅れ取り残されてしまう。徐々にあの巨大な背鰭がその少年に近づいてくる。それに気づいた監視員が急いで飛び込み、少年のところまで必死で泳ぐ。ようやくたどり着いた監視員が少年を抱え、懸命に浜まで泳がんとする。だが、あの巨大背鰭の近づくスピードがそれを上回っている。周りの人達がその光景を見て、恐怖で悲鳴をあげ始める。そして、ビーチは大混乱と化す。その巨大背鰭が少年と監視員まであと数mまで近づいた時。
突然、大きな衝撃がこの一帯を襲う。一瞬、悲鳴と絶叫が途絶える。
再び、大きな衝撃が響く。よく見ると、あの巨大背鰭の位置がかなり横にずれている。何か他の巨大生物に体当たりされたかーーーー?
巨大背鰭の持ち主が海面から、その大顎を覗かせる。三角形の鋸状の歯が非常に特徴的な、大型のサメであることがいやがうえにも見てとれる。それに続き、体当たりした側の生物も口を大きく開けて対抗する。その生物の歯は先が尖った円柱状をしており、長さだけなら先ほどの巨大ザメのを凌ぐスケールである。頭部は丸みを帯びて黒光りしており、マッコウクジラに酷似している。両者一歩も譲らず、お互い大顎を開けて相手の体を挟み込もうとする。両者凌ぎを削る中、遂に結着がついた。巨大ザメが一瞬ひるんだ瞬間、相手のクジラの長大な歯がガッチリとサメのボディに食い込んだのだ。物凄い水しぶきが飛び、大きな波が浜辺に打ち寄せる。それまで、この攻防を固唾を飲んで見守っていた観衆から再び、悲鳴が上がったーーーーー。
暴れる巨大ザメをガッチリと咥え込んだその巨大クジラは、そのまま海中深くに物凄い勢いで引きずり込んだ。一瞬にして二頭の巨体が人びとの視界から消え去ったーーーーー。
*************この海洋生物も『ExーBeast 』。巨大ザメの名は、オトドゥス・メガロドン、あのザトウクジラや密航船を襲ったモンスター。そして、そのメガロドンを凌ぐパワーの巨大クジラ、その名もリヴィアタン・メルビレイ。地球史上、最大の歯の持ち主でもある。**************
世界各地で頻発する、古代生物の出現。そして現生動物との闘争。にわかには信じがたい現象に、各国のメディアによって連日ニュースや新聞で取り上げられ、ネットの動画にもアップされ再生回数は計り知れない数に上る。
しかし、この現象は収まるどころか、ますます世界中各所で頻発の度を増していくのであるーーーーーーーー。
そして、あの仲谷獣医はというと。
“”本当に、あの古代の猛獣、サーベルタイガーやダイアウルフがこの林の中に放たれてるんだろうか…………?“”
そんな疑念を持ちながら、たった一人静かにこの林床に足を踏み入れたのだ。
その仲谷獣医の後を追うようにもう一人足を踏み入れた者がいた。
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