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突然、横の茂みから『ガサッ ガサッ!!』 という音と共に、
何か巨大な生物が、翔真の目の前に飛び出して来たのだ。
『う、うああ!!! な、何なんだ!!!???』
一瞬、心臓が止まるかと思うほどの衝撃であったーーーー。
『グル〜〜、グル〜〜〜〜〜、』
何とも形容しがたい不気味な唸り声を発しながら、ソイツはこちらを見据え、近づくでもなくまた遠ざかるでもなく、一定の距離を保ったまま微動だにせずにいた。
赤く光る目ーーーー。
腹の底に響くような唸り声ーーー。
そして、鼻につんざくような獣臭ーーー。
そういったモノが、翔真の存在そのものを覆い尽くすさんばかりの勢いで迫って来た。
漆黒の闇の中、翔真の荒い息づかいと、ソイツの低い唸り声だけが周りの静寂を打ち破り、辺り一面に響いていた。
翔真自身、いつもより自らの鼓動が大きく感じられた。
両者共お互い、微動だにすることなく対峙したままの状態が暫く続いたーーー。
外見上、翔真は極度の恐怖心と緊張から、誰の目からみてもわかるほどの冷や汗と震えが止まらなかった。
ただ、内面ではこの得体の知れない化け物の正体を知りたいと言う気持ちと、早くこの場から逃げ出したいという気持ちとの葛藤が続いていた。恐らく、十数秒であったろうこの時間が、翔真には何分、いや何十分にも感じられたーーーー。
と、次の瞬間、 ソイツは踵を返して翔真とは逆方向に走り去ってしまった。
まさに、一瞬の出来事であった………。
全身から ドッと 汗が吹き出してくるのが感じられ、翔真は
ただただ、呆然と立ち尽くすのみであった。
あの吸い込まれそうな赤い目ーーー、真底震え上がるような唸り声ーーー、
そして、強烈な獣臭ーーー。
アレはどう見ても現実そのものであり、到底、翔真の頭から拭い去れるものではなかった。
“い、いったい、今のヤツは何だったんだ? 東京近郊のこんな林の中に、あんな巨大な生物が生息してるなんて………。今のはどう見ても肉食獣だよなあ〜〜。“
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