998人が本棚に入れています
本棚に追加
『絶滅動物』ll
※※※ オーストラリア東部、乾燥した平原が広がるこの広大な大地をオオカンガルーの群れがそのずば抜けた跳躍力を見せつけるように、一直線に走っている。この大陸は、カンガルーを始め有袋類の楽園でもある。
順調に走り続ける群れ。だが、何かの気配に感づいたのか一旦その走りを辞め、立ち止まり両耳をピンと立て辺りを警戒しながら見回す。
その時だ、風下からカンガルー達に忍び寄る、“オオカミ?“と思しき体に刻み込まれた縦縞が目を惹く三頭の獣。じわじわとカンガルー達との距離を詰める。だが、カンガルー達はあらゆる五感を駆使してその存在に気づくと、一気に走り出す。スピードではやはりカンガルーの方が上だ。一旦はその獣と距離を空けるが、その獣達は慌てる様子はない。彼らは長距離ランナーなのだ。獲物を長時間走らせ、疲れが見え始めスピードが落ちてきたところを襲う魂胆だ。
徐々にカンガルー達との距離を詰めていく。カンガルー達は何とか逃げ切ろうと懸命に走り続ける。だが、遂に最後尾の個体が捕まる。群れは一旦立ち止まり、振り返るが助ける術はない。一頭の犠牲で群れが助かるのだ。群れのメンバーは再び、走り出す。その一頭は三頭の捕食者に囲まれ、なす術もなかった。首もとを噛みつかれ、地面になぎ倒され絶命するかしないかのうちに、あっという間に肉片と化していく。
だが、ここオーストラリア大陸には彼らを脅かす別の捕食者がいた。
この捕食者は一頭だったが、体格ではこの”オオカミ“と思しき捕食者達を上回っていた。この狩りの一部始終を見ていたのだ。三頭の”オオカミ“は倒した獲物に夢中となり、その新たな捕食者に気づく様子はない。一気に食事中の”オオカミ達“に割り込む新手の捕食者。その風貌はどことなく、ライオンに似ていなくもない。不意を突かれた”オオカミ達”、咄嗟に威嚇の表情をし反撃を試みるが、分が悪いと判断したのか素早く獲物から離れる。苦労の末、倒した獲物のほとんどの肉片はその新たな捕食者の胃袋に収まることとなった。
*************このオオカミと思しき獣も『ExーBeast』。 名は フクロオオカミ。別名 タスマニアタイガー。最後の個体の死亡が確認されたのは、ごく最近1936年である。そしてーーー、このフクロオオカミを一蹴した獣も『ExーBeast』名はフクロライオン、別名ティラコレオ。かつて、ここオーストラリア大陸を支配していた頂点捕食者である。*****************
※※※西アフリカコンゴ共和国。この奥地の密林に貴重なニシゴリラの生息地がある。この地に、遥かヨーロッパ・オランダからゴリラの保護と調査研究のために移り住んだ女性動物学者がいる。
彼女は観察・研究の為、ある特定の群れに受け入れて貰うために、その群れのそばで長時間過ごして彼らの警戒心を解いていく日々を送ってきた。特に、群れのリーダー、オスのシルバーバックに受け入れられる事が先決だ。長年の努力が実り、今では家族同然のように彼らは接してくれる。今日も行動調査の為、群れの傍らに陣取り調査記録用ノートに細かくいろいろメモしている。子どものゴリラはお互いじゃれあってはしゃぎまくっている。ふと、メスゴリラの一頭が何かの気配に気づいたのか、奥の茂みにゆっくりと近づく。何か危険を察知したのか、その直前で立ち止まる。ゆっくりとこちらを振り向き、何かオスゴリラに懇願するかのような表情をみせる。オスゴリラが承諾してか、その茂みに近づく。
と、突然。
その茂みからとてつもなく巨大な手が伸び、そのオスゴリラの巨体を鷲掴みにし、軽々と持ち上げる。辺りにゴリラ達の絶叫がこだまする。全身をあらわにしたその巨獣は全身けむくじゃらの、まさにケダモノであった。
彼女は恐怖で一瞬凍りつくが、咄嗟に常に護身用として携帯している銃を空に向けて発泡する。 その発泡に驚いたのか、その巨獣は持ち上げたオスゴリラを力任せに思いっきり傍らの大木に叩きつける。
オスゴリラの悲鳴と激しく鈍い音が彼女の心を締め付ける。生命の危機を感じた彼女は再び、威嚇射撃を放つ。二度の射撃に怯んだのか、その巨獣は反転しこちらに背中を向けると、その茂みの中に姿を隠した。
興奮覚めやらぬ中、徐々に冷静さを取り戻した彼女はまだ倒れたままのオスゴリラに近寄り、容態を看たのだ。外傷もさほどなく、意識もはっきりしていることが分かり、安堵した。 だが、この巨体のオスゴリラをいとも簡単に持ち上げた破壊的なパワー。あのケダモノからこのゴリラ達を守ってやらねば………。彼女がここ、コンゴの奥地に居続ける理由がまた一つ増えたのだーーーーーー。
*********この獣も『ExーBeast』。名はギガントピテクス。体長は約3m、生物史上最大の霊長類。研究者によってはこの種の子孫がUMAとしても有名なビッグフットやイエティであると、主張する者もいる。*************
最初のコメントを投稿しよう!