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空が闇に支配されるているこの時間、石畳を急いで駆ける馬車がある。   数十メートル置きに微かに照らされた街灯に照らされながら、窮屈な蹄鉄を履かされた馬が闊走する音と、つられて鈍い音をならしまわる車輪がゴトゴトと夜の闇をつんざいている。  馬車の中には、父とともに一人の少女が乗っている。 昼に蓄積した紫外線を吸った蛍石が、カンテラの中で残骸のように弱々しく短い命のような緑の燐光を放っている。  そこに照らし出された少女は、長く揺れるような波型の髪に布を巻きして、憂いを帯びような潤んだような瞳が魅力的な少女。  この闇に怯えている年頃だろう、いや、むしろこの闇が彼女にとって己が住まう領域でもあるかのように落ち着いている。  石畳の街を小一時間も走り抜けた先に、関門の形跡がある。 「おかしい、どうしてこんな時間に開門しているんだ。不気味だ。何かがあったのか」 そう父が呟くと、かまわず、 娘が「父さま、このまま進みましょう」と言った。 父は、少女の少し先を予知する力を知っているので、少しの恐れはあったが事件に巻き込まれることはないだろうと判断し進んだ。
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