翔との出逢い

2/3
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
砂浜に降りた私はテイトの後ろを追い掛けながら大きな声を出した。 「ちょっと、テイト! 待って!」 私の声が聞こえたのだろう、彼が驚いた様に振り返るのが見える。テイトはそんな彼の膝に飛び乗り、彼の顔を物凄い勢いで舐め始めた。 私はそれを見ながら彼に駆け寄った 「ああ、ごめんなさい! テイト、ダメよ!」 私はそう言うと、テイトを彼の膝から抱き上げた。 彼は嬉しそうに微笑むと、私に声を掛けてくれて。 「大丈夫だよ。犬は大好きだから。この仔はポメラニアンだよね?」 彼の笑顔に私は少しだけホッとした。彼が犬嫌いだったら、この作戦は瓦解する可能性が有ったから・・。 「本当にごめんなさい。そう。ポメラニアンのテイト。テイトは人見知りだからいつもは他人に懐かないだけど・・本当に珍しいわ・・」 この言葉に嘘は無かったけど、テイトを彼に向かわせた事実は敢えて言わなかった。代わりに目一杯の笑顔を彼に向ける。 彼は真っ直ぐに私の顔を見つめている・・。私はドキドキして、彼の顔から視線を外し、真っ赤な夕焼けを見つめる。 「貴方、いつもここで空を見上げているわよね。私、毎日テイトの散歩している時に気になってたの」 この言葉は事実だった。彼が頷くのが見える。 「この砂浜が大好きなんだ・・。そして星空を見るのが・・」 私は「フーン」と言って彼をを見つめて、そして意を決して言った。 「私は安曇 茜。ねぇ、今度、一緒に星空見てもいい?」 彼は一瞬驚いた様に私を見上げると、満面の笑みで頷いた。 「うん、いいよ。僕は遠藤(かける)。宜しくね」 うん、知ってると思いながら私も笑顔で頷いた。鼓動を速めた心臓が私の頬を(ほて)らせているのを感じていた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!