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「僕達は地球の人間です。異星人ではありません」
翔が驚いた様に翔二を見上げている。
「少し説明させて下さい。横に座って宜しいですか?」
翔が頷くと翔二が翔の横に腰を降ろした。私はその直ぐ後ろで彼らの話を聞いていた。
「貴方が地球を発って十五年後、私の祖父の会社が『縮退炉』を完成させ、そこから発生する巨大な人工重力を使って空間を捻じ曲げる技術を実現しました。それにより我々は超光速航法の技術を確立したのです。超光速航法では地球からここまで一瞬で跳躍出来ます。この技術により人類はこの星に二十年前に到達することが出来ました」
「えっ?」
翔の驚いた声が聞こえる。私は翔の声を久しぶりに聞いた
「貴方の船は船内時間で約五年を掛けてここに到達していますが、地球時間では四十年が経過しています。我々はその間に、この星を縮退炉の膨大なエネルギーを使ってテラフォーミングを行い、地球の植民星にしました。今ではこの星に十二億もの人が暮らしています。『プロキシマb』は鉱物資源が豊富で、資源を衛星軌道に上げて地球に送る為、惑星の四箇所に軌道エレベータも建設されています」
翔は呆然としていたが翔二に質問を投げ掛けている
「貴方のお祖父様の会社が『縮退炉』を開発したのですか・・。とんでもない技術を持った会社ですね。会社はアメリカの企業ですか?」
翔二が首をゆっくりと振る。
「祖父の会社は日本企業です。会社の名前は安曇工業。今は安曇重工と言う名前の世界一の複合企業に成長して、私がCEOを務めております。貴方が自分の命を掛けて母に送った資金で安曇工業は倒産の危機を乗り越え、祖父は植物状態から回復して『縮退炉』の開発に取り組むことが出来ました。全てお父さんのお陰です」
翔が更に驚いた様に翔二を見つめた。
私は手を繋いだ理紗と一緒に、もう一歩前に踏み出すと、初めて翔に声を掛けた。
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