翔との出逢い

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それから私達とテイトは、夕方から空を見上げるのが日課になった。 それは三十分ほどの時間だったけど夕焼けから星空までを見ることが出来た。 彼は星座や恒星の名前、そして宇宙の魅力を私に説明してくれる。それを聞いていただけで彼がどんなに宇宙に憧れているのかが手にとる様に分かった。 「地球から見える恒星で一等星以上の星は二十一個あるんだ。今日見えているのは、あれ・・」 翔が右手を伸ばして指差している。その先に明るい星が見える。 「あれが、おおいぬ座アルファ星、別名シリウス。地球からは八.六光年。オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオンと共に、冬の大三角を形成している」 私は直ぐにシリウスを自分の目で確認することが出来た。 「わぁ、綺麗ね。とても明るい。一等星って二十一個もあるんだ。ねぇ? 翔が一番好きなのはどの星?」 私がそう聞くと彼は少し考えて、こう言った。 「日本から見えないけど、ケンタウルス座のアルファ星かな。地球から最も近い恒星系だよ。三重連星のね。アルファ星の地球からの距離は四.三光年」 「三重連星って何?」 「ああ、アルファ星系は主星のA星と第一伴星のB星、そして少し離れていて地球からは肉眼で見えないプロキシマ・ケンタウリの三つの恒星がお互いの重心の周りを軌道運動している。二重連星の場合は双子星とも云うけどね」 「ふーん。そうなんだ。どうしてアルファ星系が一番好きなの?」 「あの星系の恒星プロキシマ・ケンタウリのハビタブルゾーンに地球型の惑星プロキシマbがあるからさ。ハビタブルゾーンと云うのは日本語で生命居住可能領域の意味だけど、太陽からの距離が適切で生命が宿っている環境があるかも知れない。凄いと思わないかい。地球から最も近い恒星系にもし生命が居るとしたら・・。僕はいつかそこに行ってみたいと思っているんだ・・」 そう笑顔で話し続ける彼の顔はいつもキラキラしていて、私をドキドキさせる。彼のそんな宇宙解説を聞いていた私も宇宙のことが大好きになっていた。 そして、いつの間にか私達はお互いをかけがえのないパートナーと考える様になっていた。 翔は幼い頃、両親に捨てられ、市の施設で暮していた。そんな両親が居ない彼を小学校と中学校の同級生は虐めていた様だ。そんなことから彼は友人も作らず、いつもこの砂浜で空を見上げていたらしい。でも流石に高校に進学し、数学オリンピックで優勝する様な抜群の成績を発揮する様になると、虐めは無くなっていたが、彼は相変わらず友達を作らず、この砂浜で星を見上げることを続けていたらしい。 だから、私は彼にとって最初の親友で、そして彼女だった。
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