プロポーズ

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プロポーズ

翔と私は帝国大学に入学した。翔が理学部宇宙物理学科、私が工学部エネルギー工学科と学部は異なっていたが、同じ大学に通えることになって、私の心は弾んでいた。私の学力では帝国大学への入学は高いハードルだったけど、翔との時間を増やす為に私は本当に努力をしたんだ。合格発表の日、二人とも合格したことを知って二人で抱き合って喜んだ。 大学三年生の夏休み、翔はアメリカに三ヶ月短期留学をした。アメリカの宇宙開発企業スペースYのインターンに応募し、その選考にパスしたんだ。 翔は目を輝かせてスペースYがどんなに素晴らしい企業かを私に説明してくれた。私も勿論、スペースYのことを知っていた。イーロン・バスクというインターネット企業で巨万の富を得た若者が自動車会社と一緒に立ち上げたこの企業は、既に世界一の宇宙開発企業だった。昨年には有人の火星探査を成功させており、次は木星圏への有人探査を行うらしい。 「僕は大学を卒業したらスペースYに就職したい。その為にもこのインターンの経験はとても有益なんだ」 私はそう嬉しそうに話す翔を見ながら、「そうだね」と頷いていた。ただ、私の本心は、翔がスペースYに就職してアメリカに行ってしまうことがとても不安だった。 勿論、私達の関係がそれで失われてしまうことはないにしても、彼と逢う機会はとても少なくなってしまうだろう。だって、この時、私は父の跡を継いで安曇工業に就職することが決まっていたからだ。
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