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新しい命を宿して
その日の夜、私達は同じランドマークタワー内に在るホテルに泊まった。六〇階のスイートルームだ。
シャワーを浴びたあと、私達は半年ぶりにお互いを確かめあった。その日の翔はいつも以上に私を求めた。でも、私もそんな彼をとても愛おしく感じていた。
翌日、私が目覚めると彼の腕の中だった。見上げると彼はもう起きていて、私を見て微笑んでいる。
「おはよう。翔・・」
「おはよう、茜。良く眠れたみたいだね・・」
私は小さく頷くと彼をギュッともう一度抱き締めた。
翔も私を抱き締めてくれる。そして、私が彼を見上げると柔らかな笑顔を向けてくれている。私は嬉しくて彼の胸に顔を埋めた。
「茜、昨日は決心がつかなくて言えなかったけど・・」
「うん? なに?」
「新しい任務のオファーを受けていたんだけど、それは断ることに決めた」
「えっ? どうして?」
私は驚いて彼を見上げた。
「それは長期間、茜に逢えなくなる任務なんだ。僕は宇宙の仕事も好きだけど、それ以上に茜のことを愛しているから・・」
私はその翔の言葉を聞いて少し不安だった。それって、私の所為で彼の夢を台無しにしてるんじゃないの・・?
「私とのことを考えてくれて嬉しい。でも、それで・・翔はいいの?」
翔は大きく頷いた。
「いいんだ。宇宙の仕事はこの任務だけじゃないから・・。他のことでも貢献出来ることは沢山ある。それよりも君との生活は僕にとって掛け替えのないものだからね・・」
その言葉は聞いて私はとても嬉しかった。私は大きく頷きながら、もう一度彼の胸に顔を埋めていた。
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