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「どうして……約束破るの? 言わないでって言ったよね?」
立花は金切り声をあげた。
教室にいた生徒たちの視線が、俺ら三人に集まる。
震える声を振り絞るようにして、立花は言った。
「私だって……本当は、歌いたいよ。……でも、もう無理なんだ……」
立花はそう言うと教室を走り去っていった。
普段の様子と違う立花を見たクラスメイトたちは、ざわざわと騒ぎ始めた。
それと同時に俺と佐々木に冷たい視線が送られてくる。
「俺、先に部活行ってるから」
佐々木は不必要な言葉を投げかけると、教室を出ていった。
俺は部活に行かないのだから、そんなことを言う必要ない。
さすがの佐々木も立花の態度に動揺しているのだろう。
俺も仕方なく教室を後にした。
*
俺ってバカだなぁ。
そう思いながら電車に揺られる。
立花との約束を破った上に、最低の行動を取るなんて。
あとから冷静になって考えて、あのときの俺を殴りたくなった。
このまま家に帰るのも気が重い。
奇跡なんて起こらない限り、会えるわけないなんて分かっているけれど、足はAnnzuの歌を初めて聴いた駅に向かっていた。
久しぶりに来た駅は相変わらず人が多く、喧騒に包まれていた。
改札を出たところの広場、人波の中に見覚えのあるさくら色のマフラーをした人物を見つけた。
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