さくら色に歌えば

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「はじめまして、立花杏子(たちばなきょうこ)です。よろしくお願いします」 真冬に転校してきた同級生は、一足早い桜の色をしたマフラーを身に付けていた。 腰まで伸ばした艶やかな黒髪、整った目鼻立ち、透き通るような白い肌。 彼女を一言で表すなら、間違いなく『美女』だった。 「じゃあ、立花、席は宮ノ下(みやのした)の後ろな」 担任教師は立花にそう言って、席に座るように促した。 「よかったな、(みのる)! かわいい転校生が後ろの席で」 俺の前の席の佐々木が振り返って、ニヤニヤしながら言った。 「別に、嬉しくなんかねぇよ」 「またまた照れ屋だなぁ~お前」 佐々木は三日月のような目をいっそう細めて笑う。 朝のショートホームルームが終わると、立花の周りはクラスメートで囲まれた。 さまざまな質問がされ、女子は連絡先を交換している。 男子はそれを遠巻きに見て、誰が最初に話しかけるか互いに様子を伺っていた。 休み時間になるたびに転校生の立花を一目見ようと、他のクラスから人がやって来ていつもより騒がしい一日はあっという間に過ぎた。
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