民衆を導くマッチ売りの少女

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 少年は、いつもの街角に座っていました。しかし、いつものように絵は並べられていませんでした。しかも、見慣れない、真っ赤なマフラーを巻いていました。  「マッチ、買ってくれるの?!」  少し弾んだ声で、座っている彼の前にしゃがみ込みました。少年は少し困ったような、いつもの笑顔を、少女に返します。    少女はこの笑顔が、少年の絵よりももっと、好きでした。  「でも、ごめん。お金は無いんだ……このマフラーと交換してくれないかな?」  少女は喜んで交換しました。お母さんには怒られるかもしれないけれど、彼の笑顔の方が、少女には何十倍も大切に思えたのです。  マフラーを巻くと、温かく、彼の体温が伝わってくるようでした。  「ありがとう。少し、一緒に来てくれないかな?見せたいものがあるんだ」  そう言うと、少年は少女の冷たい手をとって歩き始めました。
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