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2人は街中を歩いていきました。2人が通り過ぎるどの窓からも、楽しそうな声が聞こえ、美味しそうな香りも漂ってきました。
しかし、2人でいると、そんな事も考えなくなっていました。少女には、今、この世界にいるのは2人だけのような気がしていたのです。
「さ、着いたよ」
そこは町外れにある、大きな公園でした。そこからはいつも、子供たちの楽しそうな声や、大人達の難しそうなお喋りが聞こえていました。
今日の公園は、とても静かです。大晦日ですから。入り口には、入れないようにロープが張ってあります。
少年は黙って、背負っていたバッグを下ろしました。
「それはなぁに?」
少女が聞くと、大きなゴミだよ、と答えました。少年はバッグの中から、無造作にそれを取り出し、積み上げていきます。
それはゴミなんかではなく、キャンバスに描かれた美しい絵でした。
「僕は明日、戦争に行くんだ」
少年は呟きます。
「昨日、妹が死んだんだ。僕が絵なんか描いてるから。母さんが、とっくに限界だって知ってたのに。お前のせいだって言われるまで、気づかないふりして……最初から、こうした方が良かったんだ……」
少年は少女を——そのマフラーを——ちらりと見ました。
少女は少年が何を言っているのか、半分も分かりません。ただ、ひどく悲しみと寂しさを感じました。
そして、どう声をかけたらいいのかも、分かりませんでした。
少年はポケットからマッチを取り出すと、石畳の床に擦り付けました。
《シュッ!!》
勢いよく燃え上がった炎が、少年の顔を照らします。ほんの一瞬、少年の目に涙が浮かんでいるように見えました。その涙が溢れるよりも早く、少年はマッチを絵の山へ投げ入れました。
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