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プロローグ
VRtalk。
それはヘッドセットなどの機材を装着し、あたかも自分が電脳世界にダイブしたかのような没入感で様々な世界を歩き渡れるコミュニケーションゲーム。
大本の会社は、ユーザーに幾つかのワールドを用意するだけで、あとはユーザーたちが専用のシステムを使って各々好みのワールドを立ち上げたりすることによって、徐々に世界が広がっていくというシステムだ。
最初こそ、奇麗な背景にイスとテーブル、あと筆記用のペンが置いてある程度だったのだが、ユーザーたちのクリエイティブ精神は侮れない物で、気が付けば山が増え、トランプが置かれ、犬やら猫、さらには謎の魔物っぽい生き物などまで作られるようになった。
当然素人ではそうそう手を出せないシステムではあるが、少しPCへの理解があればクオリティに差はあれど、想像上の物質を作ってワールドに置くことができる。
例えばワールドにインした瞬間、出迎えてくれる可愛らしい女の子のアバター。
当然喋りはしないが、その場に立って可愛らしく微笑みを向けてくれる位はしてくれる。
中にはギミックとしてボタンを押す事で音楽を流したり、周囲の光景をガラリと変えることもできる。
もちろん、高負荷なので高性能PCを持っていないと表示どころかそのわあーるどへインすることもできない。
世の中にはPC勢と呼ばれる選ばれし戦士と、スタンドアローン勢と呼ばれる悲しき縛りを背負いし戦士が居る。
前者は素晴らしき数多ある世界を自由に行き来して、世界の広さを楽しむ。
対して後者はスタンドアローンという小型ゆえに、スペックもさほど高くない為行けるワールドに制限がある。
もちろんそれでも楽しめる。行けるワールドも十分ある。
だが、どうしても上を見上げると遠くに霞んで見える可能性に、ついつい手を伸ばしたくなるのが人情ってものだ。
「嗚呼、いつか俺もつよつよPCになりたい」
思わず零れるのは、哀愁に満ちた独り言。
今日も俺はワールドにログインする。
「VRtalk」そこにはまだ見ぬワールドが俺を待っているから。
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